24DOORS
藤城 嘘
- 2025年09月13日 - 2025年10月12日
- 会場:Marco Gallery 1F
私が何かを能動的に創造した最初の記憶は、四⽅を囲む⽩い壁とベッドの上から始まっています。5歳のころに、病気で1年間⼊院したことがあり、⽇々の時間をラクガキに費やしては、⼈に⾒せていました。⼤きな紙を広げ、看護師さんやお医者さんを巻き込んで、みんなで⼀枚の絵を描くこともありました。思い返せば、私にとって絵を描くことの原点はコミュニケーションの⼿段であり、想像⼒をつかって病室から外に向かうための“扉”でした。
絵画はいまだ“窓”に喩えられますが、その⽐喩は今も有効なのでしょうか。私の絵画は、出⼊りできる“ドア”のようなものであってほしいと思っています。デジタルイメージの制作が簡単な時代になりましたが、なお絵画を作ることに惹かれるのは、私たちが物理的な⾁体で、分厚く⼩さな壁のようなキャンバスを、⼼⾝を踊らせながら眺め回すことが、⾯⽩いと思うからです。
⽇本のオタク⽂化やインターネット⽂化に登場するイメージをそのまま現代性と捉え、絵画のモチーフにしてきましたが、もちろん私が描いてきたものはそれだけではありません。キャラクターは⽣命⼒をもったまま解体され、装飾紋様や神仏の世界と触れ合います。植物や、鉱物や、⾵景のスケッチに溶け込み、20世紀の抽象画に擬態もします。おおきな「アニメアイ」は、ブラックホールのようにぽっかりと開いています。「キャラクター」という表象を通じて、多様な⽂化や社会、多様な世界へアクセスできる“ポータル”をつくりたいという欲望があらわれているのだと、⾃分で思っています。
絵の中の「キャラクター」が旅をして様々なものと出会い触れるように、私の絵画が、⾒る⼈をべつの時空へと誘う存在であってほしいと願っています。異なる⽂化や社会を⾏き来する“ゲート”であり、誰もが外に出るために、中で過ごすために、能動的に⼿を伸ばす半ば開かれた“扉”でありたいと考えています。『24DOORS』でも私は、"ドア"にラクガキするように絵を描き、そのラクガキした"ドア"を、たくさんの可能性につなげていきたいと思っています。
